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どうしたらいいのだろうと、
思うときにはもう電車は発車していて、
乗り遅れたことに気がついたときには
尾灯だけが見えている。
信号を見るとまだまだ赤で、
次の列車なんて来るあてもなくて、
行き過ぎた列車の切符をぼんやりと
ただ手の中に握り締めていて、
たった1つ階段を踏み違えたことが
足を動かせなくしてしまうように、
1度口に出した言葉は、
耳に飛び込んだらもう二度となくなりはしないのだ

切符を持ったまま、頭の上の時刻表を眺める。
廃線になった駅には、もう電車は来ないのに。

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